2011年4月26日火曜日

230 放射線と生き物の関係-ゲノムの不安定化と修復-

がんの研究をしている友人に、率直におうかがいしたことを含めて、放射線と生き物との関係を、お伝えしたいと思います。
ゲノムは通常でも決して安定なものではなく、常時、紫外線、放射線や化学物質などの外的要因や、細胞内で生じている酸化的ストレスにさらされています。そのたびに、DNAに傷がついたり、修飾を受けるということがおこります。このような現象をDNA損傷といいます。DNA損傷がおこると、ゲノムDNAは正しく複製されなくなってしまいますが、細胞ではゲノムDNAを安定に保とうとするチェックポイント機構と修復機構が常に働いています。
しかし、修復が追いつかないほど異常が起こってしまったり、修復機構を担うしくみに異常がおこり、正常に働かなくなった時、ゲノムの安定性が失われます。これを、ゲノムの不安定化といいます。その代表的なものが、がんなのです。がんになると細胞の増殖や分化が異常になります。

それから、DNAの修復機構は、仮説では有りません。いろいろと未解明の部分は有りますが、実証されているものです。

低レベルの放射線被ばくの例をあげておきます。健康診断での胸のレントゲン検査は50マイクロシーベルトで、飛行機で、東京ーニューヨーク間を往復すると190マイクロシーベルトです。自然放射線によって、世界平均2400マイクロシーベルト/年被ばくしています。
ブラジルのガラパリ、イランのラムサール、インドのケララなどは、高自然放射線地帯として有名ですが、疫学的調査によって、特にがんの発症率が高いという事は、見いだされていないようです。