古今東西の哲学者、作家は、幸せになりたいのなら、釣りをしなさいと説きます。魚釣り が、どうして人々を魅了するのかは、不思議です。でも、確かに、川に立ち、海 辺にいけば、たとえ魚が釣れなくても、幸せな気分になれるのです。
釣りは、釣り竿、釣り 糸、そして釣り針の3つの道具だけを通して、自然と対話し、静かに、穏やかに、自然か ら大切な何かを教えてもらえる瞬間だからかも知れません。
作家、開高健は、「川の中の一本の杭と化したが、絶域の水の冷たさに声も出ない。芸術は忍耐を要求する」と、こよなく愛した釣りを芸術の世界にまで昇華しようとします。冷たい水の中にたたずみながら、唯一点を見つめる姿には、どこか温もりが感じられます。