2012年4月18日水曜日

328 放射性セシウムの自主基準値と食

生産者、流通業、自治体、いろいろなところで、より多く安心と信頼を得ようと、食品中における放射性セシウム濃度の自主基準値が設定されたりしています。国の基準値は、基本的に、肉、野菜、魚とかで、100ベクレル/kgです。国の基準値よりも低い自主基準値を達成するためには、単純に食材だけを検査するのではなく、より市民の食生活に即した計測をした方がいいのではないでしょうか。給食丸ごと検査というのもありますが、これは、口に入る直前で検査をするという考えです。食材の中には、食材そのものを計測すると国の基準値ギリギリだったり、自主基準値を数十ベクレル/kg越えていたりすることがありますが、調理をすると減少してしまうものも少なからずあると思います。ベラルーシの報告書を見ると、肉を塩漬けにすると、相当量の放射性セシウム濃度が低くなることが紹介されています。北欧のある国の政府は、チェルノブイリ事故のときに、ある程度汚染された食品でも食べることにしたようです。自主基準値を設けて、流通段階での信頼を確保する意味も理解できます。これだけ、検査装置が導入されている状況ですので、さらに踏み込んで、魚であったら煮付けや、塩焼き、お刺身でどうなるかということを調べてもいいのではないでしょうか。食の安全が守られるのは、当然のことですが、食文化をどのように守っていくかも考える必要があるのではと思います。

2012年3月25日日曜日

327 春の到来

2011年3月の震災と原発事故から始まった1年。お引き受けしているうちに、講演回数は112回を数えました。御訪ねさせていただいたところは、岩手、宮城、山形、福島、千葉、埼玉、茨城。愛車もよく頑張ってくれています。食、農業、漁業、そして生活との関係について考えさせられ、そして、多くのことを教えていただきました。4月1日から、肉、野菜、魚の規制値が100ベクレルとなります。検査ノウハウを、一刻も早く、皆さんに御届けできたらと思っています。今後とも、どうぞよろしくお願いいたします。水戸の梅も、見頃を迎えたようです。偕楽園はもとより、街のあちこちから、梅の香りが漂っています。皆様のお越しを心待ちに、御待ちしております。

2012年3月12日月曜日

326 放射能禍の中で農業を続ける意味とは

昨日、講談社現代ビジネスのコーディネートで、ジャーナリストの田原総一郎さん、津田大介さんが司会進行を努めた、「福島と日本の未来」に出演しました。最後の部分で、田原さんが、”なぜ、このような困難な状況なのに農業を続けるのか?”と問われ、地元農家の方は、”ここは、もともと農業には適していないところなのですが・・・”と。そのとき、一つのことが思い出されました。これまでにおうかがいした東北の農家の方々の言葉です。皆さん、福島の農業を本当に心配されておられ、なんとか助けられないかと思っておられるのです。だから、その地域で安全宣言をするのは、福島の人たちを踏み台にしているようで申し訳が立たないと、憤られておられました。そのことを思い出した時、グロバリゼーションという時代の流れですから、福島から農業が失われることは、東北から、そして、日本から農業が失われていくことにつながるのではと、思いました。そして、これは、日本人のアイデンティティー、つまり「生き方」が失われることにつながることになると思いました。座談会の後で、農家の方とお話ししたところ、農業をすることは、「生きる」ということ、そして、そもそも農業を営利的に行なうには困難な地域で新規就農される方がいらっしゃるとおうかがいし、農業や漁業は、食料確保のための業だけではなく、私達が生きるために必要なものなのだと確信しました。私もそうですが、多くの方は農業や漁業には従事していません。でも、私達の心のよりどころとなっているのが、農業であり、漁業なのではないのでしょうか。農家、漁業者は、私達の根幹にある「生き方」を代行してくださっているのではと感じました。だから、放射能禍にある地域でも、農業、漁業を続けることが大切なのだと思い、今後も計測支援と放射線の基礎知識をお伝えすることをしっかりしていこうと思いました。計測をして、国の基準値を超えなければ、食卓にあげることができるのですから。