新年おめでとうございます。今年もよろしくお願いいたします。
昨年の3月24日以来、食品、特に農産物における放射線計測を行なってきました。以前にもお話ししましたが、4月下旬まで大学のエレベータは動いておらず、遮へい用の鉛13個、合計143kgを4階の研究室から大学院生達が手でおろし、計測から帰ってくると、手で、4階までもって上がるということを繰り返していました。本当に、彼らの献身的な活動には頭が下がります。
主として、直売所さんと農業生産法人さんの野菜を測定していましたが、生産者、消費者が一同に会した中での計測は、生産者と消費者の信頼関係の再構築に役に立ったとおっしゃっていただき、ホッとした次第です。計測した数値だけを知ったとしても、プラスマイナスいくつの値なのか、どれだけ信頼性のある測定なのかを御知らせする必要があり、計測に先立って、計測の意味や、数値の取扱などについての説明を1時間ほどさせていただいていました。このとき、計測、そして計測した数値は、消費者と生産者、そして販売者のものであると再認識し、計測している自分は、あくまでも客観的データを提示し、解説することにだけ努めようと思いました。
5月も過ぎると、ほぼ全ての野菜からは、放射性物質を検出することがなくなりましたが、「放射性セシウムのある土で育てたのだから、ないわけがないでしょ」と電話が来たりしました。わずかなピークが見受けられたりした場合は、計測時間を12時間、24時間と長くして、測定しています。そして、ガンマ線のスペクトルで、放射性ヨウ素、セシウムのピークがないことを確認しながら行なっていますのでと説明すると、納得していただけたご様子でした。低レベルの放射線計測では、数値だけでなく、ガンマ線スペクトルの見方を知っておく必要があります。私の研究室の学生さん達は、大学で、座学としての放射線を、そして、近くの原子力研究開発機構で、放射線計測の実践トレーニングを受けている学生さん達です。まさか、そのことが、このようなときに役に立つとは夢にだに思っていなかったところです。
昨年も大晦日まで、そして年始は元旦から、計測は動いています。今年も、頑張りたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。